10年前は厳しかった育児休暇明け ~先駆者の忍耐で働きやすい職場へ ~

私の職場では、今2人の女性が育児休暇中です。

休みの間、仕事が滞りなく進むように派遣社員さんが入っていて、残っている私たちに大きな負担はありません。

派遣社員さん達は0才~中学生の子供がいる人がほとんどで、子供さんの怪我や急病で保育園からの呼び出しで早退したり、学校行事で休むことがあります。

それは子育てをしていれば当たり前のことで、申し訳ないと頭を下げる彼女たちに対して社員から不満などは特に聞こえてきません。

ただ、この環境が整うまでに、1人の女性社員の10年以上にわたる涙の路程がありました。

今回は、うちの職場で初めて育児休暇を取った鈴木さん(仮名)のお話です。

鈴木さん 快活な10才年下の同僚
職場恋愛で結婚し、2度の産休育休取得

大川さん すでに退職した10才年上の未婚の初代お局様
嫌がらせが好きで、多くの人を退職に追い込んだ伝説の人

川村さん 10才年下でバツイチの二代目お局様
数年前に大病を患い、通院加療中

社風と初代お局様

私が転勤してきた当初は、初代お局様の大川さん(仮名)を筆頭に事務所内には女性社員が6名いて、全員が独身でした。

うちの業界は男社会そのもので、あちらこちらに昭和の匂いがプンプンしています。

今はもう改善されていますが、定時に退社する人は許さないし認めないという、表には出さないけど社員はみんな知っている掟のようなものがありました。

そして、ルールブックともいえる大川さんが認めない限り、体調が悪い時や用事がある時でさえ、なかなか帰れませんでした。

退社時間に限らず、大川さんの意に反することをすればしつこく嫌がらせをされるので、役職者を含めて男女とも、彼女には触れないようにご機嫌を取りながら、好きなようにさせていました。

自分の意に沿わないことがあった時、非常識な人ほど大声を出し、常識的な人は静かにしています。

大川さんは前者であり、馬鹿げた話のように聞こえますが、誰にも手が付けられない、まさにモンスターでした。

働くママは同性にも気を遣う

そんな大川さんが退職してホッとしたのも束の間、二代目お局様として台頭してきたのが当時まだ入社して数年の川村さん(仮名)でした。

川村さんは頭がいい人です。

入社当時の川村さんは、初々しいお嬢さんでしたが、数年後に結婚し離婚をした背景があります。

川村さんと鈴木さんは年齢が近かったこともあり、鈴木さんが結婚するまでは仲が良かったのですが、月日が経つと人は変わるもので、鈴木さんに嫌がらせをする中心人物となってしまいました。

川村さんは、鈴木さんに対してのネガティブで複雑な感情を周囲の人に悟られないよう、巧みに周りの女性社員を巻き込んでいきました。

一方で男性社員はというと、配慮がないと感じることはありましたが、それは働くママがいることに慣れていないうえ、性差があるので気付かなかったのだと思います。

鈴木さんが辛抱したのを傍で見ていたので、私は世間の働くママたちの気苦労がどれほど多いか、ほんの一部ですが知ることができました。

誰が考えたのか、罠掛けた人がいる

まず驚いたのは、育児休暇明けの鈴木さんに与えられた仕事の量でした。

会議で配られた資料に、鈴木さんの復帰に伴うメンバーの担当替えが載っていましたが、どう見ても鈴木さんの量が多過ぎました。

一日二日だけならまだしも、毎日のことなのに、これはおかしい…。

絶対に定時に終われないのは明白で、私は仕事量の調整が必要ではないかと上司に伝えましたが却下されてしまいました。

隣に座った鈴木さんの顔は青ざめており、大丈夫かと小声で声を掛けると小さく何度か頷いていました。

社内恋愛で結婚した鈴木さんの夫は役職者ですし、職場でなにか困ったことがあっても夫はもちろん、誰にも相談することが出来ません。

鈴木さん夫婦は、家に帰ってからも業務上の話は一切できないのです。

愚痴も文句も言えない立場の鈴木さんは、ただ受け入れるしかありませんでした。

復帰したては注目の的

慣れない育児、山盛りの仕事、家事。

ある日、川村さんが珍しく私を呼ぶので目をやると、座ったまま転寝をしている鈴木さんが見えました。

可哀相に、疲れ果てていたのでしょうね。

毎日毎日、保育園にお迎えのタイムリミットまで仕事をしていたのですから、知らないふりをしてあげてもいいのに…。

川村さんは他の女性社員と一緒に激しく非難していましたが、私はとてもそんな気にはなれませんでした。

ほかにも、なんせ事務所初の子育て女性社員だったので、時短勤務や子供の病気による欠勤や早退といった、細々とたくさんのことが批判や噂の種となりました。

鈴木さんとは、今でも時折この頃を思い出して、2人で涙を浮かべながら「よく乗り越えたよね」と、しみじみと話すことがあります。

辞めるのは逃げじゃない 

川村さんは鈴木さんのことを「結婚して子供産んで、自分は勝ち組と思ってるに違いない」と怒っていました。

それを聞いた私は、川村さんは頭が良くて若くてきれいでありながら、自分を負け組だと感じ、鈴木さんに嫉妬していることに驚きました。

この言葉をきっかけに私は、嫉妬した心を納めきれずに鈴木さんを攻撃する川村さんと距離を置くことにしました。

子供を産めるかどうか年齢的に微妙な女性たちが嫉妬に駆られ、働くママに与える打撃を甘く見てはいけません。

あまり酷い時は、そこに居続けるよりも辞めて新しい道を探した方がいいように思います。

千里の道も一歩から

さて、こうして鈴木さんが辛抱し、働くママとして荒れ地のような職場を開拓したお蔭で、後から入ってきた社員や派遣社員さんからの評判は良いようです。

子供のことで休むのは当たり前で、子供のこと家庭のことは後悔の無いようにしましょう。

子供の励みになるので、学校行事には是非行ってあげてください。(私も一緒に行きたいくらい。)

子供が具合悪そうなら、病院行くにしても家で様子見るにしても、仕事のことは心配しないで任せてもらって大丈夫です。

お迎えの時間に余裕をもって間に合うように、あとは私がするから気を付けて帰ってください。

人にもよりますが、10年以上かかって大体こんな雰囲気になってきました。

そして、職場の働くママたちに、若い時には分からないかもしれないからと前置きして、ことあるごとに伝えていることがあります。

「仕事はどうにでもなるよ。でも家庭を損したら人生なんにもならん。仕事優先じゃなく家庭優先にした方がいいよ。」

お互い様として、みんなが少しずつサポートしあえばきっといい環境が出来るでしょう。

子供たちのために、働くママたちが仕事で疲れ果ててしまわないよう、余力を残して家に帰れるようになったらいいですね。

女の敵は女。これは本当かもしれない。

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