うちの辺りは季節を問わず、たくさんの鳥があちらこちらで可愛い姿を見せてくれたり、楽しく歌を歌ってくれたりしています。
雀、シジュウカラ、カラス、鳩、メジロ。
野鳥にはそれほど関心がなかったのですが、一羽のメジロと出会って鳥が大好きになりました。
迷い込んできた、春を告げる鳥メジロ
ある冬の日ことです。
昼休みになったばかりの事務所の玄関先に、派遣社員さんがしゃがみこんでいたので覗いてみると、床のグレーチングの上に一羽の小鳥がいました。
人が出入りすると観音開きのガラス扉が当たるか、気付かずに人が踏んでしまうような、小鳥にとっては危険な場所です。
通りかかる同僚や出入りの業者さん、郵便配達の人までもが立ち止まり、可哀相な小鳥をどうしたものかとみんなで話し合いました。
「飛べないし動けないので、脚を悪くしているんじゃないか」「カラスに追い立てられて落ちたんじゃないか」「人間が触ったら、もう野生動物の世界で生きていけない」など、ワイワイと、まあ賑やかなこと。
そのうち「メジロの赤ちゃんだ」と教えてくれる人がいて、物知りだと感心しているところに、「ちょっと待って、メジロは保護できないよね」と心配する声も聞こえてきて、みんなハラハラドキドキしたのです。
とにかく、そのままにしておくと踏まれるということで、場所を移動させることにしました。
さぁ、私の出番ね。動物は任せてください。
卵を掴む時のように手のひらを軽く丸めて、声を掛けながらそっと優しく包むように触れてみます。
きっと怖かったのでしょうね。細い足でグレーチングをしっかり掴んでなかなか動こうとしません。
脚が折れてないか、他に怪我してないか観察しながら、ゆっくりと時間をかけて手の中に入れることができました。
メジロさん、元気でいてね
怪我をした様子もなかったので、玄関先に落ちていたのは恐らくカラスに追われたんだろうということになりました。
捕獲や飼育をしてはいけない鳥らしいので、私たちはこの可愛らしいメジロを玄関脇の生け垣の向こう側にある草の上に置いてあげました。
バイバイ、メジロちゃん。このまま無事に生きていけるか心配だけど、元気で大きくなってね。
心残りがある中、「自然のものは自然に帰そう」とみんなで慰め合いながら、それぞれ昼食をとりに出掛けました。
昼休みが終わって生け垣の向こうを覗いてみると、そこにはもうメジロの姿はなく、羽が散っているなど乱れた様子もなかったので、きっと元気に飛んでいったのだと思います。
空から落ちてしまって、たくさんの人間に囲まれたので、びっくりして腰を抜かしていたのかもしれないですね。
そしてまた今年も、今までと変わらず、美しいメジロたちが可愛らしい歌声を聞かせてくれています。
あの時のメジロちゃんもいるかな。